2016年08月23日

紀州備長炭の窯(かま)



紀州備長炭の窯

紀州備長炭の窯は、多くの場合2、3名で協力しながら作られ、完成まで3〜4か月ほどかかります。
大変高度な技術が必要で、必ずベテランの製炭師の指導により作られます。
窯には製炭者の個性やノウハウがふんだんに取り入れられるので、使用する材料、構造や形状も異なります。
窯の大きさもそれぞれの製炭者のワークスタイルで異なり、一度の製炭で20数俵〜40数俵(1俵は一箱15kg)程度と様々です。
一人で製炭するのか、家族や仲間で助け合えるのか、原木の調達具合や体力により異なるのです。
様々な周囲環境に合わない窯を作ってしまうと、とても仕事がきつくなります。

窯はある程度使用するとひび割れなどで性能が低下するため、作り直しが必要です。
その時の体力や周囲環境に合わせて、大きさの違う窯に作り直すのです。

多くの場合、紀州備長炭の窯はこのように山の傾斜部を少し削って作られます。
山の土で保温性を高め、窯を支えるためです。
ただ、地形により雨水が流れ込んでくることも多く、場所の選定が難しいです。


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近年では山の代わりに、平地にコンクリートでコの字型の防波堤のような壁を作り、その内側に窯を設けたものも多くなっています。
窯はできるだけ蓄熱量が多いほど高温に保たれ、連続して効率よく良質な炭を作りやすくなります。
そのため蓄熱性、断熱性を持たせるため、とても厚みのある構造になっています。

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窯内部はこのような「いちじく」のような形状です。
備長炭(白炭)は燃焼状態で窯の外に出されるため、その時は人が中に入ることはできません。
そのため、全ての部分が外からかき出せるように「いちじく型」にするのです。

 ↓左側が入口  これは補修中の窯で断熱・蓄熱用の瓦を土で固めながら積んでいます。

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天井はドーム型で、大変な高温にさらされるため、ひび割れしないよう慎重に作られます。
ひび割れがあると空気が抜けてしまい、燃焼調整ができなくなってしまいます。
土の種類や配合、固め方など非常に高度な技術を要します。
経験値の少ない人は、ベテランにノウハウを伝授してもらって作ります。
相当なベテランでないと窯を作ることはできず、習得するには20〜30年は十分にかかり、
指導者となるにはそれ以上の年月がかかるようです。
2~3年も使用するとこのドーム屋根がひび割れて空気が抜けるので、この屋根のみ補修されることも多いです。

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製作中の窯の内側を見上げると、写真ではわかりませんが、丁寧に木を積み上げてドーム形状がつくられています。
この木の上に土を塗って、最後に木を燃やしてしまうとドーム屋根が現れるのです。

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使用する土質は非常に重要で、その土の採掘場所は秘密にされるほどです。
ブレンドしたり、古い窯の土を使うこともあります。











窯の入口は人が出入りできるよう縦長に作り、火を入れるときは全面を土で塞ぎ、
その時々に応じて空気量を調節するため、小さな穴を開けたり、口の形を変化させたりします。
この空気の調整はそれぞれの窯の個性や原木の入れ方、季節、火力などにより異なり、高度な技術が必要です。
主に煙の色と臭いで調整を行い、ミスると火力の出ない炭や形状が崩れガチャガチャの炭になってしまいます。
風邪をひいて臭いに鈍感な時は、近くの仲間を呼んで判断してもらうほど臭いが大事なのです。

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窯に入れるため用意されたウバメガシ。
多くの原木を窯に入れるため、曲がりくねった原木に切り目を入れ直線的に伸ばされています。
よく見るとドーム型の天井高に合わせて、原木の長さを調整しています。

人が入れない高温の窯に原木を入れるときは、水平に入れてから、棒を使って跳ね上げて入れます。
そのためにも口は縦長になっているのです。

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紀州備長炭は原木を必ず縦に入れます。
※土佐備長炭は横積みです。









窯の最奥下部に設けられた排出口の入口。
窯内で熱された空気(煙)はこの排出口から、煙突を通り排出されます。
この口の大きさや内部構造も非常に重要な部分で、作りが悪いとよい炭が焼けません。

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窯上部の排出口の出口。ここに煙突を接続します。
排出量(煙の引き)を調整するためキャップを置いたり、接続する煙突の長さや角度を調整します。

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窯の横に窯出しされた備長炭を消火するスペースがあります。
灰と土を混ぜた、す灰(スバイ)に水をまき、その中に備長炭を埋めて消火します。
このす灰が炭の表面に付着し、白っぽく見えるため一般的な黒炭に対して、備長炭は「白炭」と言われます。

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Posted by field5392 at 11:50│TrackBack(0)

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