福島県喜多方市の役人屋敷の囲炉裏です。
江戸時代の会津藩には、農民を支配するための郷頭制度という独特な制度がありました。
一村を取りまとめる村方役人肝煎(きもいり)と、複数の村を組ごとにまとめる郷頭(ごうがしら)と言われる地方役人の屋敷です。
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郷頭屋敷旧外島家住宅 重要文化財
郷頭は複数の肝煎を取りまとめる立場で、
屋敷内も広々として貫禄があります。

お役人のことですから、当然のごとく上座と下座の囲炉裏に分かれています。
板の間にも段差があります。
左:土間横の下座の囲炉裏 右:上座の囲炉裏



同じ東北でも比較的温暖な会津地方では、早くから竈(かまど)が発達したようです。
夏季は囲炉裏から火を遠ざけて、竈と井戸で効率よく調理したようです。

会津地方(福島)特有の炉縁の継ぎ方です。
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肝煎屋敷旧手代木家住宅 重要文化財
肝煎(きもいり)はいわゆる庄屋さんのことです
こちらも上座(写真右)、下座の囲炉裏があります。



使い込まれた自在鉤で、ヤニがべったり付着しています。

贅沢な木炭を使用できるため、
囲炉裏のない各部屋には火鉢が使われています。
上座の囲炉裏も木炭が主流だったと思います。

こちらにも立派な竈とすぐ横に井戸があります。
会津地方特有の大きな石造りの火消し壷が置かれています。
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番外編です
同じ喜多方の「甲斐本家蔵座敷」です。
酒、繊維、味噌などを商ういわゆる豪商で、極めて贅沢な作りの屋敷です。
この屋敷には囲炉裏がなく、調理は竈、暖は贅沢に多くの火鉢で木炭を使っていたようです。
囲炉裏を無くし、火鉢で木炭を使うのは富と文化の象徴だったと思います。
煙で室内が汚れる薪の使用は論外だったのではないでしょうか。


囲炉裏代わりの大火鉢が印象的です。
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