木灰の樹種について
一般的には、下記条件を満たすため、堅木の広葉樹を使用します。
1 炭火の燃焼具合が良好
2 しっかり五徳などを支えることができる 魚串を立てることができる(押し固まる)
3 美しい灰模様が描ける
これらの性能を問わなければ、針葉樹や草木の灰なども使用できます。ただ、完全に燃焼しきった「灰」でないと煙や臭気が発生します。
また、一部の石炭や建材、廃棄物など毒性のある灰や、灰という名称でありながら灰でないものも存在しますのでそのあたりはご注意ください。
※灰汁抜きや染色などの用途では、樹種成分により化学反応が異なりますので、樹種による差があると思います。
堅木の広葉樹------------------------------------------------------------------------------------
囲炉裏灰・火鉢灰の代表的なものは堅木の広葉樹です。
特に木炭の原木として使われる、ナラ・クヌギ・カシの木灰が、炭焼き窯から副産物として出ることが多く代表的なものとなっています。
その他、ケヤキ・シイ・ヤマザクラ・ツバキ・サカキ・ソバなどなど、よい木灰となる樹種は多数あります。
単に副産物としてとれないので、販売されないだけです。
ナラ → クヌギ → カシ
いわゆる高級灰として扱われる代表的な堅木広葉樹の灰です。
色や質感が異なりますが、これは樹種ではなく灰の作り方で変わるのです。



勘違いが多いです

灰の色は、ナラ・クヌギ・カシなど樹種によって異なると思われがちで、販売業者さんですら間違っておられることが多いのですが、
少なくともこれらの樹種であれば区別は不可能です。差は無いかもしれません。
原木の燃焼温度などによる差の方がはるかに大きいのです。
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クヌギの灰が最高級

茶室の炉(風炉)ではクヌギの高級木炭が使われるため、クヌギの灰が高級品と勘違いされるようです。
販売業者さんも、勘違いと思いこみからクヌギが高級という観念を広めてしまったようです。
実際には、クヌギ、ナラ、カシの灰を肉眼で識別できる人はいないと思います。
少なくとも私(店主)は、見ても使っても、まったく区別不能です。
区別すらできないものを高級と言ってはダメと思います。
では、何が違うのかと言いますと、燃焼・精製の方法で、色や質感が大きく異なるのです。
クヌギの灰は綺麗に精製されることが多かっただけなのです。

←全て「ナラの木灰」ですが、燃焼方法の違いでこんなに色が異なります。
もちろん、クヌギも同様に色が異なります。

←同様に全て「カシの灰」ですが、やはり色に差があります。
カシは高温の白炭窯で作られることが多いので濃色の灰が多いです。
※左上端のものは、高温で長時間焼かれた灰です。
山 桜

山桜の木灰も上質です。
針葉樹、草木類 ------------------------------------------------------------------------------
杉・桧 針葉樹
針葉樹の灰は、軽くて淡色ですが、高温で燃焼させれば濃色になります。
ただ、針葉樹は比重が小さく、大量に燃焼させても灰の量がわずかです。

竹
竹は比重が大きく、燃焼方法によって良質の灰になるように思われます。


マングローブ
※マングローブとは塩性湿地に生育する樹木の総称で、特定の樹木ではありません。
かなり白っぽく、国産の木炭にはありえないものです。


藁(わら)
藁灰は火鉢の灰として昔からよく用いられるものです。
美しい灰模様が描けないので、大きな火鉢や囲炉裏では見劣りしてしまうのと、五徳を支えたり、串を立てることができません。
また、火力を抑える効果がなく、火力コントロールができません。
少し風が吹くと舞い上がるので、小さな火鉢のみおすすめです。


左は、黒く炭化した繊維(炭)が残っています。この繊維は炭火に触れると、煙・臭気を出します。
この炭化繊維を美しく作ったものは、茶の湯の火鉢などに装飾として使われます。
火鉢を黒く美しい藁で演出するのです。
モミガラ
モミガラ灰は藁同様に火鉢などでよく使われたものです。
左は燃焼を途中で止め、炭化状態にしたもので一般的には田畑に蒔き肥料にしますが、
火鉢に入れると燃焼してとても暖かくなります。臭気・煙が出るので囲炉裏のあるような昔の家屋でないと使えません。
右はそれを燃やして灰になったもの。サクサクとした特有の質感です。


ススキ
藁に似ていますが、もっとシャキッとした感じです。
ススキは枯れても倒れませんが、これはガラス成分を多く含むためです。
この灰を1200度以上の高温で溶かすとガラス玉ができます。

はぶ茶
やはり草木類の灰は、木の灰と異なりすごく軽質で淡色です。
藁と同様に繊維質が残ります。

その他------------------------------------------------------------------------------------
オガ炭
焼肉店でお馴染みのオガ炭です。
樹種は様々で特定できませんが、高温で焼かれるためか?濃色です。


豆 炭
石炭の粉などが含まれます。正確な含有物は不明です。
多くの灰が残ります。


炭 団
木炭の粉などが含まれます。正確な含有物は不明です。
多くの灰が残ります。


石 炭
ストーブの燃料などに使われる石炭です。
石炭は原産地によって水銀やヒ素などの重金属が含まれるので注意が必要です。
安全な石炭もありますので事前にご確認を!



石炭は燃えカスが多く、
フルイにかけて取り除かないと美しい灰になりません。
線 香
たぶの木の樹皮や香料、着色料などを含みます。
とても美しい灰ですが、量がないので用途が限られます。
線香により灰の色や質が異なり、線香の臭いが残っています。


???灰
大手量販店などで販売されている灰です。何の灰かわからないものがよく売られています。
こんなに白っぽいものは、広葉樹ではなく、マングローブか何か南洋材のような感じです。
藤灰など特殊なものでない限り、日本の木材ではここまで白い灰はないように思います。

茶の湯で用いる灰------------------------------------------------------------------------------------
これは市販されている茶道用の灰です。
茶の湯では灰はすごく重要なもので、水ヒなどにより長時間かけて精製されますので、
茶人によってはもっともっと美しいものが使われると思います。
茶の湯の作法によって様々な形に灰が盛られ、特有の模様が描かれます。
囲炉裏や火鉢の灰とは異なる性能を求められると思います。
炉用灰 成分不明です

茶室の炉(小さな囲炉裏)に用います。
これは市販品ですが、
クヌギ・ナラなど広葉樹の灰を水ヒして使うことが多いようです。
風炉灰 成分不明です

茶の湯用の鉄や木製の小さな炉(風炉)に用います。
これは市販品ですが、
クヌギ・ナラなど広葉樹の灰を水ヒして使うことが多いようです。
香炉灰 成分不明です

香炉に用います。
湿し灰 成分不明です

水で湿らした灰を炉中に蒔いて使います。
藤灰(富じ灰) 化粧灰

藤の灰はとても白く美しいので、
夏季に炉中に蒔いて涼しさの演出に使われます。
菱灰

菱の身の殻の灰で特有の赤みのある灰です。
香炉や煙草盆に用います。

茶の湯の灰の多くは微粉末でモロモロしています。
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