ここからは囲炉裏の道具(設備ではなく購入できるもの)をご紹介します。
絶対的に必要なもの、場合によって必要なもの、ほとんど使わないもの、いろいろとありますので、
自分の囲炉裏スタイルを作るための参考としてご覧ください。
囲炉裏道具の名称・呼び名には方言(地方色)が多く、ここでご紹介している以外の言葉も多数あると思われます。
また、名称不明のもの、昔には無かったものに関しましては、本囲炉裏本舗において名付けた道具もございます。
囲炉裏の灰----------------------------------------------------------------------------------------------
昔の薪の囲炉裏では、土の上で燃やした薪の灰が自然と溜まったものを使ったり、風呂や竈の灰を移し変えたりしていました。
多くの薪を使い、熱効率や灰模様にこだわらないなら、土や砂利の上で薪を燃やしてもかまいませんので、
必ずしも囲炉裏に灰が必要というわけではありません。
ただ、土や砂利は熱伝導率が高く、どんどん熱を吸収するので木炭の使用は困難です。特に少量の木炭ではすぐに火が消えてしまいます。
■木灰
囲炉裏には一般的に木灰を使用します。もくはい、きばい、もっかい、と読みます。
木灰は広葉樹のナラ、クヌギ、カシなど広葉樹(堅木)の灰が一般的ですが、できれば「囲炉裏に向いた灰」を使ってください
ナラ、クヌギ、カシなら何でもよいというものではありません。
これは一般的に上質と言われる、純粋の木灰ですが、
フカフカ、モロモロしすぎて灰模様が描けません。
茶道で使う上質と言われる灰や水で濾した釉薬用の木灰の多くは
微粉末でモロモロして模様を描きにくいのです。
囲炉裏の灰として上質かが問題です。
囲炉裏の灰は「火力を上げる断熱性」と逆に「火力を抑える働き」も必要で、
かつ美しい灰模様が描けるように「サラサラ感」が必要なのです。
灰は同じ原木でも、燃焼温度、燃焼速度、酸素の供給(酸化・還元)などにより、質感も色合いも大きく変化します。
囲炉裏に灰模様を描くには「サラサラ感」
のある灰が必要です。
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囲炉裏の灰模様
詳細はこちらから
■藁灰(わらばい)
囲炉裏に使われることは少ないですが・・・
藁灰は少量の炭火でもなかなか消えない抜群の保温力がありますが、
逆に灰をかけても火力を抑えることができません。
また、ふかふかしすぎで五徳などを支えることができず、
灰模様も描けませんので、一般的に囲炉裏の灰としては使われません。
※米のモミガラを使ったモミガラ灰もあります。
■セラミック灰
囲炉裏本舗による名称です。
ホコリの立たないセラミック灰
旅館や飲食店の囲炉裏にもおすすめ!
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灰の下に敷く軽石--------------------------------------------------------------------------------------------
囲炉裏の炉が深すぎる場合、木灰の量が足りない時は大粒の軽石を入れて、耐火ボードを敷いてから灰を入れることをおすすめします。
園芸用軽石「パミス」
砂利よりも軽量で囲炉裏の移動や撤去、清掃の時も扱いやすいです。
ホームセンターで安価に入手できます。
囲炉裏の灰に砂利が混ざると見た目にも
美しいとはいえなくなります。
囲炉裏の「灰と軽石」「灰と砂利」は混ざらないよう、
耐火ボードで仕切ることをおすすめします。
木炭の下に敷く珪藻土板--------------------------------------------------------------------------------------------
囲炉裏の断熱性を強化させる場合や、セラミック灰の五徳を安定させたい時に使います。
七輪と同様の素材、珪藻土の板です。
囲炉裏の中央部や五徳の下など熱の加わる部分に敷きます。
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囲炉裏の燃料---------------------------------------------------------------------------------------------
囲炉裏の燃料はもちろん「薪」が元祖で、人類が火を使うようになった頃から変わりません。
後に「木炭」が普及して「薪」と併用する時代を経て、現在は多くの囲炉裏で「木炭」が使用されています。
木炭は煙が立たず火持ちもよく昔から重宝されていますが、山林伐採で無償で入手できる薪と違い高価なため、
昭和に入ってからも裕福な家庭の囲炉裏でないと使用されなかったようです。
また、煙により茅葺屋根などを燻煙するため、あえて「薪」を使用することもあります。
薪は薪ストーブと同様にカシ、ナラ、クヌギなど広葉樹の火力の強いものが好まれます。
その他、柴、竹、藁、モミガラなどなんでも燃やしたようです。
木炭の使用起源は不明ですが、一部の富裕層である豪商、豪農の囲炉裏に普及したのは江戸時代後期〜明治にかけてのようです。
ただ、1500年代に千利休が囲炉裏(炉)で木炭を使用した炭点前(すみてまえ)を創り出したことからもっと古くから使われいたのかもしれません。
(白川郷の囲炉裏)
「薪の囲炉裏」と「木炭の囲炉裏」の2つを使い分けていました。
手前が客人用で主に木炭の囲炉裏、向こう側が薪の囲炉裏。
木炭の囲炉裏には薪の熾火を使うことも多かったようです。
■ 薪
煙と臭気が強いので薪を使うにはそれなりの設備が必要です。
田舎作りの別荘などで楽しむ方もおられますが、一般住宅の囲炉裏ではまず無理です。
排気ダクトの下ででも燃やせますがあまり意味がありません。
対流熱が多いので煮炊き物に向きます。焼き物には熾火を利用します。
伐採や薪割りなど薪作りで楽しめます。
※多くの場合、薪ストーブ愛好家の趣味です。
■木 炭
煙がなく火持ちがよいので室内での使用に向いています。
一般住宅やマンションなど、ほとんどの囲炉裏で使われています。
黒 炭
リーズナブルで着火させやすいので多くの囲炉裏で使われています。
品質により強弱がありますが臭気があります。
切り炭
ナラ、クヌギ、カシの炭が一般的ですが、
日本には様々な樹種の優れた木炭があります。
囲炉裏上部に換気フードがあれば屋外BBQ用の輸入木炭も使えます。
このような長い黒炭を使うと薪感覚の囲炉裏となります。
もともと木炭は長いものをカットして販売されています。
オガ炭も使えますが、焼肉店のようで囲炉裏の風情がなくなるように思います。
黒炭は一部分から燃焼が進みます。
そのため赤外線が少ないので、焼き物はかなり燃焼を進めてからがおすすめ。
白 炭(備長炭など)
囲炉裏には高価?ですがほぼ無臭で強い赤外線を出し、炭火焼きに向いています。
着火させにくいですが、火持ちがよいです。
特に小さな囲炉裏におすすめです。
白炭は着火直後から全体が燃焼して、
強い赤外線を出します。
抜群に暖かい囲炉裏となります。
白炭と黒炭の違いの詳細はこちら その他、七輪と同様に豆炭や練炭も使えますが一般的ではありません。
五 徳-------------------------------------------------------------------------------------------------------------
三徳と言われることも。
五徳は鍋、鉄瓶、焼き網をのせたり、魚焼きの竹串を立てかけたりするものです。
大きな鍋を使う場合、自在鉤では調整が難しく危険なので五徳を使います。
五徳も前項の自在鉤同様に「五徳を使う」、「自在鉤を使う」、「併用する」の3つに分かれるので必ずしも必要なものではありません。
また、五徳は囲炉裏用、火鉢用と区別があるものではなく、基本的に大きさが異なるものです。
囲炉裏の五徳
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▼白川郷合掌造り集落の五徳です。この地方では「金輪:かなわ」と言います。
大家族で大きな鍋を使うため自在鉤は使えません。
薪がくべやすいように足元が大きく広がっています。岐阜県周辺でよく見かけるタイプです。
昔の囲炉裏道具は村の鍛冶屋さんが農具と共に作っていました。
内 炉 うちろ--------------------------------------------------------------------------------------------
内炉は炉を内外で分けて、囲炉裏の機能を高めるためのものです。
形状により「呂金」や「炉鍋」などと言われることもあります。
※「内炉」は適切な名称がないので、囲炉裏本舗が名づけたものです。
このように炉の内外を仕切ったものが内炉の原型であると思われます。
外側を砂利にすることで鉄瓶や鍋などの道具を置いたり、
魚串を立てやすくしたりします。
内炉に灰を入れて、外炉にセラミック灰を敷き詰めると、ホコリが立ちにくく、
炭粉などが内炉に閉じ込められるので囲炉裏を美しく保てます。
木灰+セラミック灰
内炉に木灰、外炉にセラミック灰を入れています。
内外共に木灰を入れて美しい灰模様を描いています。
自在鉤を使わない囲炉裏には内炉に五徳を置いて使います。
石川県喜多家住宅の囲炉裏です。円形の内炉で、周囲も木灰です。
円形の内炉を活かして美しい灰模様を描いています。
この灰模様は数十年もの間、毎朝書き直されている伝統的なものです。
当店の円形の内炉です。
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これは「呂金」とも言われる内炉で、北海道の囲炉裏でよく見られるものです。
このタイプには底のないものもあります。
北海道の鰊御殿の囲炉裏の多くには、このような四角い鉄製の内炉があります。
周囲は小粒の石が敷かれています。
岐阜県松本家住宅の内炉です。
四角形の内炉で、灰が掻き出せるように、一部(左側)が取り外せるようになっています。周囲は砂利敷きです。
主に北海道の商家で見られる贅沢な内炉です。
外側を銅板で覆い、灰を見せず、内炉の形状にも凝って高級感を持たせています。
やはり富裕層は木炭を使ったようです。
この地方特有の灰を見せない文化が発展したようです。
←長火鉢に使う銅壷(どうこ)に近いもので、鉄瓶をのせる五徳と一体化させたもの。
北海道の「旧三マス河本そば屋」の粋な囲炉裏です。
角型の内炉 販売中
ワタシ-------------------------------------------------------------------------------------------------
北陸地方ではテッキと呼ばれます。
囲炉裏で団子、お餅、おにぎりなどを焼く時に使う台で、火元に差し出せるように取っ手が付いています。
囲炉裏の熾き火を掻き出して下に入れて使います。
白川郷の囲炉裏のワタシ(テッキ)です。
固定タイプのワタシ。
瓶台(下記参照)としても使われます。
瓶 台------------------------------------------------------------------------------------------------------
瓶台(びんだい)は五徳や自在鉤から下ろした鉄瓶や鍋を置く台です。
また、下に炭火を入れて加熱、保温することもできます。
※瓶台はそもそもこういうタイプの道具があったかどうかも不明で名称がないため、囲炉裏本舗が名づけたものです。
実際に使用するとけっこう便利なものです。
囲炉裏用瓶台 販売中
コーナー用瓶台
囲炉裏テーブルや長火鉢用の小さな瓶台です。
串立て------------------------------------------------------------------------------------------------------
魚串を支える台です。串をより安定させたい時や串の立たないセラミック灰の使用時に用います。
囲炉裏の串立て 販売中
火 箸------------------------------------------------------------------------------------------------------
炭火のための金属製の箸です。
囲炉裏用の火箸というものが特別にあるわけではありません。囲炉裏も火鉢も同じものなのですが、炉の大きい囲炉裏にはバランス上、大きな火箸を使うことが多いです。
ただ、大きな火箸ほど使いにくくなります。
また、大きな囲炉裏では「火掻き」や「火ばさみ」を使う方が実用的で、特に炭火の移動には火ばさみが役立ちます。
「火箸のうんちく」はこちら
灰ならし------------------------------------------------------------------------------------------------------
囲炉裏の灰を整えたり、灰模様を描くものです。
これも囲炉裏用というものがあるわけではなく、炉の大きさや灰模様の描き方により大きさを変えます。
「灰ならしのうんちく」はこちら
これは「灰掻き(はいかき)」とも言われるもので、薪の囲炉裏でよく使われるものです。
灰に埋まった炭を掻き出して灰を整えるものです。小さなものは火鉢にも使います。
火掻き(ひかき)・灰掻き(はいかき)---------------------------------------------------------------------
火掻きは主に火力調整のため薪や木炭を移動させるもので、竈(かまど)やストーブにも使われます。
灰掻きは主に灰に穴を掘ったり、山を作ったりするものです。
炉の大きさに合う長さのものを選びます。
各左が「火掻き」 各右が「灰掻き」
囲炉裏の火掻き・灰掻き 販売中
囲炉裏の中の五徳や瓶台など加熱した道具の移動にも使います
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