◆囲炉裏の框(かまち)◆---------------------------------------------------------------------------
框とは囲炉裏の四方を囲む木枠です。炉縁とも言います。
昔のものは多くの場合、細い縁ですが現在のものは、食器類が置けるように太くする傾向にあります。
框(かまち)の材料------------------------------------------------------------------------------------------
■材質
框に使う木材は基本的にテーブルの天板と同様の機能があればよいので、特殊な木材を使う必要はなく家具に使われる材料でかまいません。
ただ、家具にスギやヒノキなどの柔らかい針葉樹があまり使われないのと同様に、框はキズつきやすいので、高価ですができれば硬い広葉樹を使いたいところです。
昔から高級とされるのは模様の美しいカキ(黒柿)やケヤキですが、あまりにも高価なので、ナラ、オーク、タモなどの広葉樹の堅木がおすすめです。
炉縁は鉄瓶や瓶敷きなど重い金属製品を置くことが多く、キズ、凹みが着きやすいのでなるべく硬い木材を選んでください。
また、赤外線が直接あたるので、小さな囲炉裏では50度〜100度くらいになりますので、ソリや割れのでないよく乾燥させた良質の木材を使ってください。
大きな割れが生じることがよくありますのでご注意を!
薄い合板などは高温になるので、無垢か集成材でなるべく大材を使用してください。
←黒柿の炉縁
右側の板はケヤキ
前々項に登場した「喜多家の囲炉裏」です。
框は柿(かき)、囲炉裏右側の上り縁や床板に欅(けやき)が使われています。
長年磨かれ光沢がでて傷も少なくとても美しいです。
塗装はされていません。
※昔の囲炉裏の炉縁は塗装されていないものがほとんどですが、一部に漆塗りのものがあります。
今時このような高級材は使えませんが、できることなら長年使ってより美しくなるような広葉樹を選びたいものです。
タモ無垢材の框
現在の炉縁はこのように100〜200ほどの幅を持たせたものが多いです。
←1200×900 厚み55 炉縁の幅150
←1660×1160 厚み60 框の幅180 タモ無垢材の炉縁
これは着色ニス仕上げです。
タモは木目が美しく上質で着色もしやすいので囲炉裏や火鉢によく使われます。
価格もケヤキやナラと比べるとけっこう安価なので店舗でもよく使われます。
■塗装
框の塗装は家具と同様に、キズ、熱に強いウレタン塗装がおすすめです。
昔のように塗装なしで磨きこむのが理想ですが、コップの濡れ跡などが目立つところが難点です。
框の接ぎ方------------------------------------------------------------------------------------------
特別な接ぎ方など決まりはありません。基本的に一般的な家具と同様で、意匠性で決めればよいと思います。
ただ、框は火があたるので歪みやすく、大きな歪みで隙間や段差ができやすく、
時間が経つととても不恰好なものとなります。
ボルト締め、接着、継手の工夫でしっかり継いでやることが肝心です。
■相欠き接ぎ
厚みを半分にして重ねて止めます
通し平枘(ひらほぞ)の継手です
■留め接ぎ
昔の囲炉裏には少ない方法ですが、現在は機械の加工技術もあり多く使われています。
内部に薄板を差し込み、歪みが起こらない継手にしています。
(裏側)穴は継手をさらに補強するためのボルト穴です。
右側は穴を埋めたもの
三方留め接ぎ
3ヶ所を留め接ぎにして、1ヶ所のみ相欠き接ぎ(写真左手前)にしたものです。
厄除けになるとの迷信からきている風習らしいですが、ほとんど見かけないので、
ごく一部の地域の風習かと思います。
古民家の囲炉裏ではまだ見たことがないのですが、参考まで。
■??接ぎ ※名称がわかりません
炉縁の接ぎ方は、継手や仕口の専門書を見ても載っておらず名称が不明です。
↓福島県周辺、大内宿、喜多方、会津若松などでよく見かける接ぎ方で、
高温になる框の歪みに絶える優れた継手です。
通し平枘(ひらほぞ)の継手も応用されています。
↓これは、上の継手を表面上のみ真似た近年のもので、見事に歪んでしまっています。写真をクリック拡大して見てください。
加工方法がわからず困難なのでカットだけして合わせた?のだと思います。
框は熱が加わるのでとても歪みが出やすいのです。
さらに複雑な接ぎです
←北海道 旧竹井商店酒造部の囲炉裏です
少し食い込む形で継がれています。
■会津接ぎ(囲炉裏本舗オリジナル2008)
これは上記の会津方面で見られる昔ながらの継ぎ方に、私共が改良を加えたものです。
接ぎの名称がないので「会津接ぎ」と命名させていただきました。
加工が複雑ですが非常に強固な継手となっています。
囲炉裏本舗おすすめの自信作で、標準仕様としています。
こちらで販売中
框の大きさ------------------------------------------------------------------------------------------
■框の幅
昔の囲炉裏は幅の狭い框が主流ですが、現在は食器類の置ける幅広の框が主流です。意匠的に広い框を嫌う場合は、お盆やお膳(箱膳)などを炉辺に置いて解決できます。
広い框は15cm〜20cmほどが一般的で、それ以上太くなるとよほど囲炉裏が大きくないとバランスが保てなくなります。
↓畳の部屋では、このような細い框も端正でデザイン性に優れていると思います。
「粋」を感じませんか。
■框の高さ
あぐらを組んで炉辺に座ると框は膝の下に収まります。
そのため框の高さは、フラットかせいぜい円座の厚み程度です。
あまり高いと板床に座ったとき框に足がかかり痛いです。
足が痛いと炭火に触りにくくなります。
逆にフラットにすると円座や道具が囲炉裏に滑り落ちやすくなります。
框の高さは30〜40mm程度がおすすめです。
円座に座るとほぼフラットになり、
板床に座っても大して邪魔になりません。
但し、置き畳などを敷く時は厚みを差し引いてください。
高い框はナンセンス
旅館や飲食店で見かける、20〜30cmほどもある高い炉縁の囲炉裏ですが、これはあくまでも業務用(料理客用)と見る方がよいと思います。
框が高いと足元に赤外線が当たらず、暖かくありませんし、大きな囲炉裏では炭火に近づきにくくなります。囲炉裏の魅力半減かもしれません。
昔からある囲炉裏に框の高いものが存在しないのはそのためです。
テーブルを兼ねて特に框を高くしたい場合は、囲炉裏にせず移動可能な「囲炉裏風テーブル」や「長火鉢」を選択する方がよいかもしれません。
囲炉裏料理店の框です。
料理店ではテーブルの代わりとして、高い框にすることが多いです。
框高11cm タモ材 着色ニス仕上げ
鉄炉の受け方------------------------------------------------------------------------------------------
鉄炉を用いる場合は「吊り」にして框で鉄炉を受ける方法と、「押さえ」にして鉄炉の耳を框で押さえる方法があります。
吊り
鉄炉と框のわずかな隙間にホコリが溜まりやすいですが、
鉄炉をはずしやすいというメリットがあります。
鉄炉をはずすと人が入れるので、
床下点検口になるという優れものです
押さえ
鉄炉ははずしにくくなりますが、収まりの美しい方法です。
框の裏側に鉄炉の厚み分の削りこみをいれます。
←炉縁の裏側
←この耳の部分を押さえ込みます。(鉄炉は裏向きです)
框の面取り------------------------------------------------------------------------------------------
框の外側は、5Rほどか5〜10mm程度の平面を取ります。
北海道の囲炉裏の多くは、内側に面取りがあります。北海道特有のものです。
フタを設けないなら内側の面取りもした方がよいかもしれません。
框の固定------------------------------------------------------------------------------------------
框は上方向に持ち上がることはないので、周囲をフローリングで囲む場合は、特に固定の必要はありません。
フローリングにのせる場合は、框の裏に凹溝を掘って、床に5mmほどの高さの木片凸を取り付けてはめ込みます。
固定のために設けた溝
框の飾り
飾りを設けた珍しい炉縁です。
高知県の工務店
有限会社工務店森本様の囲炉裏です。
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