喜多家住宅
灰模様
上級編でもご紹介している喜多家住宅です。
重要文化財 喜多家住宅
石川県金沢市郊外野々市町本町3
076−248−1131
見学できる施設となっており、11代当主・喜多直次さんにご説明いただけます。
入館料400円。駐車場があります。(2005年情報です)
喜多家は酒造りを営んだ商家で、建物は典型的な金沢の町屋形式です。
囲炉裏には茶の湯の教養から生まれた美しい灰模様が描かれ、家具調度品を含めた建物全体がいわゆる田舎造りでなく、非常に洗練された意匠で構成されています。
灰模様を含め家人の教養の高さをうかがい知ることのできる民家です。
玄関を入ると広い上り縁に囲炉裏があります。
炊事との関り、客人との関わり上、便利な位置にあるのです。
自在鉤の上には北陸地方によく見られる大きなケヤキの「空鉤(そらかぎ)」が吊るされています。
暖簾の模様が粋ですね。上の「大」の表示はその月が大の月であることを示すカレンダー?で、裏側は「小」と書かれています。
上に並ぶ箱は提灯(ちょうちん)箱で、豪商の玄関周りには大抵置いてあります。
煙草盆や丸火鉢も当時のままに置かれています。煙草盆の灰形も美しく整えられ、明らかな茶の湯のしきたりが見られます。
ちょっとした客人は、上り縁に腰掛けて商談、その次は囲炉裏か横の丸火鉢にあたって商談。上客のみ奥座敷へ通されたのです。
土間から囲炉裏の上部は見事な梁組み(立体格子)で、この広さと高さが豪商の証のようです。
座敷から2階建てになっています。
囲炉裏の模様は毎朝書き直すことが喜多家の慣わしです。炉は140cm×104cmとほぼルート矩形の美しい比率です。内炉(炉の中の円形)はあえて中心をはずして、美しい模様が構成されています。
ある方に教わったのですが、空鉤や自在鉤を用いると中心がずれやすいとのこと。
たぶん、ずれてしまったものをあえて直さず模様を描いたのでは?と推測しています。
囲炉裏はもちろん木炭専用で、主に客人の茶をたてるために使われていました。
左が茶釜用の水瓶、右は炭取り(木炭の箱)です。
囲炉裏横の衝立に隠されて置かれています。
書斎、座敷にも大木をくりぬいた、くりぬき火鉢が置かれています。
右はなんと直径70cmもある松の大木です。
囲炉裏では調理しませんから、調理用の竈があります。
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