灰ならしの上級者の条件は、様々な灰模様を組み合わせて、囲炉裏全体をまとめた美しい模様に仕上げること。そして、美しいラインで正確に再現できることが必要条件かと思われます。私自身がまだまだ上級レベルではないので、喜多家住宅の囲炉裏をご紹介します。
喜多家住宅の囲炉裏
喜多家住宅は、1891年(明治24年)に現在の場所に移築された、伝統的技術の冴える大きな町屋で、重要文化財の指定を受けています。代々油屋から、幕末には酒造りを営んできた豪商です。
そのため建物をはじめ、囲炉裏や家具調度品にいたるまで、非常に洗練された高級品で、先代のセンスを窺いみることができます。
建物はもちろんのこと囲炉裏も豪商らしく、田舎くささのない上品なつくりです。
薪を使わない木炭(当時は高級品)の囲炉裏で、客人に出すお茶の湯を茶釜で沸かすために使われていました。串を立てて魚を焼くタイプの囲炉裏ではありません。茶の湯の炉に近い雰囲気があります。
囲炉裏の灰模様
上級編に相応しい、高度なテクニックで非常に美しい模様が描かれています。
この囲炉裏の灰模様は、石川県のポスターや古民家の本に紹介されるなど有名なものです。先代の誰がこの模様を描き初めたのか、11代当主・喜多直次氏にお伺いしましたが、残念ながらそれはわからないそうです。
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囲炉裏の灰は、もちろん本物の「木灰」です。
中央の内炉(円形)は、あえて中心をずらして、
模様を描いています。
灰模様(灰形)は、毎朝描かれます。
この囲炉裏の灰模様は毎朝描かれます。模様がくずれなければ描き直す必要はないように思われますが、そういう問題ではないようです。
火元である囲炉裏の清浄を保ち、客人を向かえ入れるのが喜多家の慣わしですから、仏壇に毎朝手を合わせるのと同様に、毎朝、灰が整えられるのです。
だいたい10〜15分ほどでこの模様を書き直すそうです。
高度なテクニックで描かれた模様で、一度で書き上げるには何年も練習しないと描けそうにありません。
もちろん描き初めの位置から、書き終わりの位置まで、順序正しく描かれ、その技法は代々喜多家に伝わるものです。
炉縁の直線と内炉の円を最後に描いて、灰だまりを消しています。
写真左の曲線模様は写真上に座り、写真下から上に向かって描かれています。最も難しい模様とのことです。
縦線により、中心がずれないようにきっちりと下書きしてから描きますが、灰ならしの回転がすごく難しいです。
私も挑戦しましたが、ぜんぜんだめです。まだまだ修業がたりません。
石川県、金沢、能登方面へお越しの最は是非お立ち寄りください。
重要文化財 喜多家住宅
石川県金沢市郊外野々市町本町3
076−248−1131
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