火鉢や囲炉裏の木灰は貴重な存在か?
昔は竈(かまど)から
竈でご飯を炊いたり、薪で風呂の湯を沸かしたころは、各家庭にはいくらでも木灰があって、江戸時代には木灰の回収業者もおり、畑の土壌改良やこんにゃく作り、布地の灰汁抜きなどさまざまな用途があったようです。
「灰屋」という職業も存在していました。
しかし、今や家庭から出る灰というと蚊取り線香か仏壇の線香の灰くらいになってしまいました。
「竈(かまど)」、「へっつい」とも言います。
京都弁で「おくどさん」「おくどはん」です。
大量の原木から少量の灰
1トンもの原木を燃やしても、わずか5kgほど、1/200ほどの木灰にしかなりません。
さらに篩(フルイ)にかけて細かい粒子のみ残すと、1/300ほどになってしまいます。
たとえ廃材でも大量の木材を集めて燃焼させるには大変な労力と時間がかかり、設備も必要です。
火鉢や囲炉裏の木灰を製造するために木材を燃やしてもまったく採算が合いませんので、生産は無理なのです。
もし生産しますと、とんでもない高価格になってしまいます。
CO2排出規制
そして、環境を悪化させることから、CO2排出規制が厳しくなり、製材所・家具工場・解体業者さんなどでも木材を燃焼させることができなくなりました。農家や林業を営む方でも雑木や廃材の燃焼を避けるよう指導されているほどです。今ではCO2は木のまま保存するのが得策と言われますが、もともと木や木炭は自らが吸い取ったCO2を排出するだけで、環境負荷はないはずなのですが、石油や石炭など化石燃料の排出分の処理係りになっているようです。
やはり、黒い煙を出すものを燃やしてはだめです。木や草の煙は白です。
副産物として生産
木灰は副産物として生産されたものを利用するのが、最も適切な方法です。
鰹節など食品の燻煙(焙乾)の行程で、大量の堅木を燃やしますので、その灰が最も安全で純度が高いと思います。食品に使うため管理が厳しく、廃材やわけのわからない木の混入がありません。
また、木炭を作る過程でも木灰が生まれます。一般的な木炭の窯からは、主に口火で炊く木の灰や失敗して木炭を燃焼させてしまった灰が生まれます。特に備長炭(白炭)の窯からは多くの灰が生まれます。白炭は精錬という工程で木炭を激しく燃焼させるため、灰になる部分も多いのです。紀州備長炭の窯で1ヶ月におおよそ10トンほどの樫の木を使用しますが、1つの窯で1ヶ月に20kgほどの灰が出ます。
※但し、炭窯の灰は砂利の混入が多く、食品用には向きません。またアルカリ度(Ph)も高くありませんので、染色などにも不向きです。
昔の人は、囲炉裏や火鉢の灰がこんなに高価なのか?と驚かれるのですが、今や木灰は貴重なのです。
上質の木灰を使った火鉢と囲炉裏です。
左の火鉢で約10kg、右の囲炉裏で約100kgの木灰が入っています。
100kgの美しい木灰を取るには30トンもの原木を燃やさなければなりません。
火鉢・囲炉裏の安全な木灰は七輪本舗へ
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