2007年11月27日

火鉢の種類


器に灰を入れれば火鉢!
火鉢は灰を耐火断熱材として炭火を入れる器です。それなりの器であればどんなものでも火鉢として使えます。
囲炉裏が移動不可能な家の「設備」であるのに対して、火鉢は手軽に移動できる暖房兼湯沸し道具として、その昔は各家庭に数個もあった生活必需品です。
素材も形状も多種多様で、空き缶や木箱などの不用品で代用されることも多々あったようです。
今でも多くの蔵や納戸から様々に火鉢がでてきて、ちょっとした再使用ブームが起こっています。


◆火鉢の素材-------------------------------------------------------------------------------------------
陶器や金属性の耐火素材に限らず、一見して燃えやすそうな、木箱や竹篭の火鉢も多く見られます。
身近な素材で形になるものは何でも使ったと思われます。
灰による耐火断熱により、使い方を間違わなければ可燃素材でも危険なものではありません。

  陶磁器製
  瀬戸火鉢とよばれ、近年に低コストで量産されたので圧倒的な普及率でした。
  今でも庭先で金魚鉢や植木鉢にされているものをよく見かけますね。
  もちろん工芸品として価値の高い品も多くあります。

  木製
  切り株をくり貫いた「くり貫き火鉢」と、板で組んだ「長火鉢・箱火鉢」があります。竹篭に銅板を内貼りしたものもあります。

  金属製
  金火鉢と呼ばれ、主に銅・真鋳・鉄・ジュラルミンなどの金属性で、比較的高価なものが多いです。
  銀や錫など高価な素材も使われます。

  石造
  天然石をくり貫いた石造の火鉢です。
  ※まだ写真がありません。


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ここでご紹介する火鉢は、私が写真を撮ることができた数少ない火鉢です。
実際にはもっともっと多種多様な火鉢があります。
興味のある方は古道具・斎明堂さんのホームページなどもご覧ください。
下の分類は一般的な呼称による分類です。

○瀬戸火鉢(丸火鉢)
○金火鉢(丸火鉢)
○長火鉢(関東長火鉢・関西長火鉢)
○箱火鉢
○くり貫き火鉢
○大名火鉢(猫足火鉢)
○大火鉢
○手あぶり火鉢



瀬戸火鉢---------------------------------------------------------------------------------------------------
陶磁器の火鉢で、丸火鉢と呼ばれることも多いようです。絵模様がとても多彩です。
炭火を入れると上部が暖かくなり、ここに手を当てるととても暖かいです。
火鉢は耐火性の高い陶磁器を用います。
最近は火鉢風のワインクーラーなどもありますが、これに炭火を入れると割れる可能性大です。ご注意を!
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これは私が開花火鉢と名づけて作ったもの









金火鉢----------------------------------------------------------------------------------------------------
唐金(からかね)火鉢とも言われます。
唐金は真鋳や古銅の総称だそうです。(斎明堂さんのホームページより)
鋳物で作られており、凝った装飾のものが多いです。

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長火鉢-----------------------------------------------------------------------------------------------------
長火鉢は大別すると、皿などを置く縁のある「関西長火鉢」と、縁のない「関東長火鉢」に分かれます。
また、地方よる特色もあるようです。
多くのものが欅(けやき)を使っていますが、現在では大きな欅(日本の!)はほとんどなく、あっても非常に高価で製造が困難です。

関東・関西でなぜ形が違うのか?
これは推測に過ぎないのですが、関東以北では近年まで囲炉裏のある家屋が多く、
1〜2箇所の囲炉裏と複数の火鉢を併用することが多かったのです。
これに対して比較的温暖な関西以北の家屋には囲炉裏が少なく、竈(かまど)と火鉢の文化が発達しました。
暑い季節が長いので、調理のための囲炉裏の火を台所の竈へ遠ざけたのです。
京都はこれの典型で、あれだけの古都でありながら、囲炉裏は皆無といってよいほどありません。もっぱら竈(おくどさん)の文化なのです。
そのため、関西以西では火鉢を囲炉裏に代わる、家族団欒の場とするため、食器などが置けるように縁を付けたのだと思います。
逆に関東では火鉢に囲炉裏的な要素は不要と考え、贅沢な調度品、粋、というものを求めて、関東長火鉢が完成したと思います。
関西は長火鉢で家族団欒ワイワイ♪。関東は旦那衆がキセルでカンカン!女子供は長火鉢に座るな!というイメージです。
長火鉢を作れる職人さんがほとんどいなくなり、今、そこそこの長火鉢を作るとかるく数十万円はかかるようです。
ある職人さんによると50〜70万円くらい・・・と言っておられました。


◆関東長火鉢
旦那衆に愛された関東長火鉢。
関東長火鉢は、上座、下座の区別が明確で、上座から引き出しが使えます。
下座に座る時は旦那にご褒美をいただけるか、キセルで頭コツン!のどちらか・・・。
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↓この2つは私の愛用品です。
関西にも関東長火鉢は意外に多くあり、全国的には関東長火鉢の方がかなり多いようです。

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←箱火鉢(下記)に近い簡素なもの








◆関西長火鉢 
関西長火鉢は四方に人が座れるものも多く、上座・下座の意識も少なく、
「餅でも焼いて食べまへんか〜」という関西らしいノリです。
今ではこれを原型にした「囲炉裏テーブル」が普及しています。

関西長火鉢 1関西長火鉢 2関西長火鉢 3






↑松山市・山内様の関西長火鉢です。
今時珍しい立派な関西長火鉢で手作りの品だそうです。
伝統的な造作で囲炉裏テーブル化していないところが素晴らしいです。
なら灰、鉄瓶などの道具一式をご使用いただいています。

最近は「囲炉裏テーブル(正確には火鉢です)」といった、囲炉裏のイメージで作られたものばかりで、
こういった関西長火鉢が作られることが少なくなったことは悲しいことです。
本来は囲炉裏より火鉢の方が文化的なのですが、何故か囲炉裏という方が売りやすいようです。


関西長火鉢
豊橋市田中様の手作りの関西長火鉢です。
子供たちの炭火体験など学校教育の一端として自作されたそうです。
環境問題を考える機会にもなるようです。
素晴らしい〜



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昭和レトロを感じる関西長火鉢ですが、
北海道の鰊御殿に保存されているものです。
北海道は開拓の土地なので、関東色、関西色と開拓者により様々です。
戦後に新素材の合板を使い量産品として作られたものと思います。
今では妙にチープにみえてしまいますね。


 ↓ 高知県高知市 旧前田家住宅の関西長火鉢
炉縁が留継ぎ(斜め合わせ)ですが、木の伸縮で隙間が開いてくるのを防ぐため、
差し込みにした珍しいものです。
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S様ご愛用の関西長火鉢








箱火鉢-------------------------------------------------------------------------------------------------------
板組みの四角い小さな火鉢です。
軽量で移動性がよく、家庭の個室や旅館・飲食店でよく使われていました。
旅館で布団を敷くときなども簡単に移動でき、積み重ねて保管できるので、とても便利だったと思います。
右側はそば屋さんで使われていたもの。一組の客に一つの火鉢があたるよう、数多く使われています。
小さな箱は煙草盆(灰皿)です。

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↓香川県高松市 旧吉野家住宅(漁師の家)の火鉢
小火鉢箱火鉢というか、小火鉢というか
耐火のため内側が土で作られています









くり貫き火鉢----------------------------------------------------------------------------------------
切り株をくり貫いて、内側に銅板を貼ったものです。
樹種は様々ですが、昔のものは今では入手できない大木で作られているものが多いです。

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蒔絵火鉢の多くも、くり貫きです









大火鉢------------------------------------------------------------------------------------------------------
どのような形状でも大きければ大火鉢と言えるでしょうが、一般的には大勢で囲炉裏のように囲む火鉢を指します。
現在では囲炉裏テーブルと呼ばれることが多いですが、本来的には火鉢(移動可能な家具)です。

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私が実験的に作ってみた関西長火鉢風の大火鉢です。








大名火鉢(猫足)------------------------------------------------------------------------------------------
大名火鉢という呼称がどれだけ一般的か疑わしいですが、意匠に凝ったゴージャスな火鉢です。
公家・武家など身分の高い人、お客様用の火鉢です。
移動性の高い箱火鉢のような使い方が多かったと思います。

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手あぶり火鉢-------------------------------------------------------------------------------------------------
大火鉢に対して小さな火鉢の総称で、主に手先を使う仕事をする時に、横に置いて使う火鉢です。
小さいため火鉢の素材と炭火が接近するので、耐火性のある陶器や金属性のものが多いです。
取っ手付きの火鉢は珍しいです。
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その他 分類できない火鉢

ちょっと珍しい八角形の火鉢です。長火鉢の職人さんが作ったと思いますが・・・
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缶火鉢とでもいいますか・・・金火鉢とはいいがたい、鉄板製の火鉢です。
職場で使われたものと思います。フタが付いています。
この種の火鉢も多くあったと思いますが、資産価値がないためかあまり残っていません。
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まだまだ続きます・・・・



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Posted by field5392 at 10:57│TrackBack(0)

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